ピロリ菌の正式名称はヘリコバクター・ピロリです。胃の粘膜に生息しており、胃の粘膜の表層を破壊し、その下にある上皮細胞に侵入して炎症を起こします。慢性胃炎や十二指腸潰瘍、胃がんの原因菌とされています。国内の感染者は約3,500万人ともいわれ、中高年者が多いとされます。20代が10%以下、30代は10%前後ですが、60代以上では40%以上にも達します。ピロリ菌の感染者は感染していない人と比べて、胃がんになる確率が約5倍高いとされます。胃がんのリスク判定には、ピロリ菌感染の有無と胃粘膜の萎縮度の組み合わせで評価するABC分類が用いられています。
世界保健機関の国際がん研究機関は、ピロリ菌の感染者が多い地域では除菌などの対策をとることを勧めています。除菌方法は、胃酸の分泌を抑える薬と2種類の抗菌薬の合計3種類を、朝夕1回ずつ7日間飲むのが一般的です。1回での除菌の成功率は、かつては7~8割程度でしたが、新しい薬の登場で近年は9割程度になっています。除菌で公的医療保険が使える対象は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎の患者です。2013年に慢性胃炎も加わり、2回目まで保険が適用されます。
(2017年1月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)