重い心臓病の患者が補助人工心臓の手術を受けるケースが増えてきています。血液を循環するポンプを体内に入れて心臓の働きを補う治療で、従来に比べて機器が小型になった上、治療にかかる費用も保険で賄われるようになってきています。心臓移植を受けるまでの橋渡しとしての役割ですが、移植を待つ間も退院して社会生活に復帰できるようになってきました。補助人工心臓は、主に体の外にポンプなどを置いて体内に差し込んだパイプで血液を送る体外設置型と体内にポンプ本体を移植して外部から電気を送り駆動する植え込み型が多くあります。従来は体外設置型が多く、退院して社会生活に復帰するのは困難でした。
現在、植え込み型で保険が適用されている機器は主に4種類あります。手術にかかる数千万円の治療費について患者の負担はほとんどありません。手術を受ける患者は、心筋が硬くなって血液を全身に送る左心室などの働きが悪くなる拡張型心筋症の患者が多くを占めています。症状が進むと命を失う恐れもあり、根本的な治療には心臓移植が必要となります。手術の2年後の生存率は、最も使われる植え込み型で90%程度です。補助人工心臓の問題としては、ポンプなどの不具合や感染症、血管が詰まる血栓などがあげられます。
(2016年7月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)