米国の大学に留学する日本人の数が伸び悩んでいます。米国の留学促進団体IIEによると、米国の大学で学ぶ日本人留学生は1997年度の4万7,073人をピークに減少傾向を示し、2011年度以降は2万人を切ったままです。日本の大学に在籍する米国人留学生は増加傾向にありますが、2013年度で約6,000人にとどまっています。日本からの留学者数が伸び悩む背景には、留学資金の不足や英語コミュニケーション能力への不安などがあることなどがあげられます。さらに、新卒採用の日程が留学時期確保の妨げになっています。秋入学の米国から留学を終えて夏に帰国しても、就職活動に間に合わないことが想定されるためです。
一方、日本学生支援機構の調査では、現地の語学学校などで学ぶため、1か月未満の短期で渡米する大学生は、2014年度が約9,500人と過去5年間で3倍以上に増えています。米国への留学が増えない理由は、就活日程のほか、学費の高騰や治安への不安なども挙げられます。さらに現代の若者の内向き指向も一因と思われます。私たちが30代の頃は、同級生の約半数が米国をはじめとする諸外国に留学していました。現在の若手医師の希望は、留学よりも専門医の資格取得にあるように思います。若い時期に海外での研究や臨床経験は、かけがえのないものであり、徒為となるものではありません。
(2016年7月21日 読売新聞)
(吉村 やすのり)