地方は人口流出に悩んでいますが、女性が大きな影響を与えています。経済的に豊かな地方でさえ、女性を引き留められず危機感は募っています。女性の流出に悩む地方は増えています。国立社会保障・人口問題研究所の分析によれば、2000年以降、若い女性の割合は地方より都市の方が高くなっています。高度経済成長期には、若い男性が地方から都市に流入しました。しかし、高学歴化などで、徐々に女性の移動が増加するようになっています。女性は男性より地方に戻る人が少なく、都市部に集中し続けています。
若い女性が地方から離れる理由としては、経済的な理由だけではなく、地方の古いしきたりなどが定着を阻害している可能性があります。地方においては、3世代同居や共働き出生率が高く、子育てしやすい県もみられます。しかし、共働きでも家事の負担は女性が重く、妻の余暇時間は最も短くなっています。女性の生き方の選択肢が増える中で、魅力的な仕事や環境がなければ、女性は地方に定着しそうにありません。若い女性が流出する地域の未来は大変厳しいものがあります。人口減少への対策として出産・育児や結婚移住に予算を充てる自治体は多くなっています。しかし、お金より大切なのは、女性が性別による役割にとらわれず、暮らしやすい社会を創ることにあります。
(2016年7月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)