iPS細胞ストック

 iPS細胞は、患者自身の体細胞からねらった細胞を作り出すことができ、かつ自分の細胞を使うため移植による拒絶反応を避けられることが、別の万能細胞であるES細胞とは異なる利点とされています。しかし、iPS細胞による治療が一般的に医療に結びつくかどうかは、作製までの期間と費用の問題が大きく立ちはだかっています。加齢黄斑変性という目の難病に対して、iPSによる網膜シートを準備するのに10カ月間も要し、遺伝子異常がないかなどを調べるのに約1億円もかかりました。
 他人のiPS細胞の利用は、準備期間や費用という弱点を補う可能性があります。すでに健康な人からiPS細胞を作られており、最短1カ月で準備できるといわれています。また、できた細胞を複数の患者に使えるため、費用も抑えられます。しかし、他人のiPS細胞を移植に使う上で、拒絶反応が大きな課題となります。臨床研究では、日本人の17%をカバーするHLA型の細胞を用い、免疫抑制剤はほとんど使わずに移植することにしています。ただHLAの型が一致していても、他の部分が一致していないことによる拒絶反応が起こる可能性もあります。HLAを合わせた場合に、どれくらい効果があり、拒絶反応はどれくらいなのかを調べるのが一番大きな目的だそうです。いずれにしても、iPS細胞による臨床応用は、まだまだ時期尚早です。

(2016年7月7日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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