厚生労働省は、抗がん剤など高額な画期的新薬の価格抑制に向け、高額薬の指針を作ることにしています。1人あたり年3,500万円かかるがん免疫治療薬オプジーボなどの高額医薬品があります。適正使用に向けたガイドライン(指針)を年内に作り、合わせて保険適用する病気の対象を広げる際に薬価を値下げできる仕組みを検討します。年8兆円にのぼる薬剤費の抑制を図るのが目的です。公的な医療保険制度では、月ごとの医療費の自己負担に上限を設けた高額療養費制度があり、高額薬の価格が多少下がっても、患者の窓口負担は変わりません。ただ、年8兆円にのぼる薬剤費は税金や保険料で賄っています。
政府は高齢化で医療費が増える中、薬剤費を少しでも抑えたいと考えています。日本医師会は価格の引き下げこそ必要と認めつつも、診療報酬改定時に薬価の引き下げ分を診察料など本体本部に充当すべきと考えています。一方、引き下げを嫌う製薬会社は開発コストが回収しにくくなり、技術革新を阻害すると主張しています。高額医薬品の使用については、受益者負担の割合を増やすべきです。保険適用や高額療養制度の利用は差し控えるべきだと思われます。
(2016年7月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)