覚醒剤や大麻など薬物依存症患者の専門治療が、今年の4月に初めて診療報酬の対象になりました。薬物の維持・使用などに対する刑期の一部を猶予する制度が始まり、医療機関での治療を後押しして薬物犯罪を繰り返さないようにしています。SMARPPと呼ばれる薬物依存症の集団療法では、2006年に開発された治療プログラムです。週1回90分、専用テキストに自分の実体験や使いたいときの対処法などを書き込み、それらを互いに話し合います。
4月の診療報酬の改定により、医療機関は患者1人あたり1回3,400円の報酬が得られるようになりました。有罪判決を受けた薬物使用者の刑期の一部を猶予できるようになり、社会での更生の道を探ることが可能となっています。長期に服役しても、出所直後に薬物を再び使うケースは多くなっています。薬物依存は刑罰を与えることより治療が優先します。薬物依存症は、完治することが難しい慢性疾患です。SMARPPなら3カ月後も7~9割の人が治療を続けられます。少なくとも各県に1カ所以上集団療法ができる施設を整えることにより、患者が通いやすいようにして治療の機会を与えることが大切となります。
(2016年8月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)