厚生労働省は、再開の見直しはまったくたっていないと述べています。同省の検討会が13年6月に推奨中断に踏み切った時は、長引けばワクチンへの信頼が失われると説明していました。中断はあくまで、一時的な措置のはずでした。健康被害については、昨年1月接種時の痛みや不安が心身の反応を引き起こしたとの見解が出されました。ワクチン成分が直接の原因となった可能性には、科学的知見がない判断されました。
しかし、心身の反応とする見解に、被害を訴える人たちが猛反発し、医療関係者の中にも、このワクチン自体がもつ問題点を指摘する人がみられるようになってきています。ある医師は、ワクチンに関連する神経免疫異常症候群という新しい病態の概念を主張しています。厚労省は症例を過去にさかのぼって調査し、患者の健康状態を追跡調査するなどして、ワクチンとの関係など原因究明を急いでいます。こうした副反応はわが国に特徴的な現象であり、極めて例外的です。ワクチン接種を実施している海外においては、ワクチン接種により子宮頸がんの発症リスクが減少したとの報告もみられるようになってきています。将来、日本だけが子宮頸がんの罹患率の高い国となってしまうのではないかと大いに懸念されます。
(2015年6月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)