国が、子宮頸がんワクチンの接種を積極的に進める施策を中断して2年が経過しました。慢性的な痛みなどの副反用が相次ぎ報告され、独自に健康被害の支援に乗り出す自治体も出始めています。接種した10代を中心に現れた全身の痛みやけいれんといった副反応の原因は、いまもはっきりしない状況にあります。厚生労働省は因果関係の調査を進めていますが、結論が出るのはまだまだ時間がかかりそうです。接種が進まない状況が続くなか、がん予防する機会を奪われるとの指摘も出始めています。
子宮頸がんは、女性の子宮の入り口近くにできるがんで、ヒトパピロ-マウィルス(HPV)と呼ばれるウィルスが原因となり発症し、主に性交渉で感染します。厚労省によると、ここ数年は年間約1万人が発症し、約3千人が死亡しています。20~30歳代の若い世代で増加傾向にあり、死を免れても手術で子宮を全摘するなど、心身のダメ-ジは大きなものがあります。多くのがん予防が難しいとされるなか、子宮頸がんは数少ない予防できるがんと言われています。世界でワクチン接種が進むなか、接種が進んでいない日本の現状は極めて例外的です。
(2015年6月14日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)