日本の医療現場にいる医師は29万人ほどです。2010年の統計では、人口1000人当たりの医師数は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均が約3人なのに対し、日本は約2人となっています。国際的には医師数は少なめです。人口10万人当たりの医師数をみると、2012年の時点で全国平均は約227人です。都道府県別では、東京都は300人近くいるのに対し、隣の埼玉県は約150人と全国最低です。一方、診療科別でみると、産婦人科や外科は減少傾向にあります。
国際的にみて、日本の医師数は少ないのですが、病院は多く、入院ベット数も多いのが現状です。OECDの統計によると、人口1000人当たりベット数は13.6あり、ドイツは約8、フランスは6程度、米国に至っては3ベットほどにすぎません。この結果、日本では1ベット当たりの医師数が、欧米に比べて相当少なくなります。欧米では入院患者に対し、初期に濃密な医療を提供して、一気に治療し、早く退院させやすい環境があるといえます。日本ではそれができにくい状況にあります。ベットが多いと、必ずしも入院する必要がない患者まで入院させてしまい、医療費がかさむという指摘もあります。人口減少や高齢化社会に対応できる医療制度の改革が必要となります。そのためには、医師の地域格差や診療科医師数の是正、さらに 病院集約化は喫緊の課題です。
(2015年6月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)